大澤さんからのアンサー
私は仕事で、劇場やホールの事業評価や、文化に関する政策評価について考えることが多いのですが、例えば「劇場」を取り上げたときに、先に挙げた3つの評価の意味に沿って、何が評価の対象になるか、簡潔に整理してみました。
1. 物の善悪・美醜などを考え、価値を定めること。
→ 自主企画事業の公演に対する批評、感想、満足度
2. 品物の値段を定めること。また、その値段。
→ 企画した事業に関する予算の折衝、予算や決算の査定
3. 物の値打ちを認めてほめること。
→ 企画した事業に関するアドボカシー(政策提言、権利擁護)
先の回答にも書きましたが、私は 3. の視点での評価にいつも軸足を置いているつもりですが、1. や 2. の視点を簡単に切り離せるわけでもありません。
例えば劇場の運営組織は多くの場合、常に 2. の意味での評価に晒されています。数年前から国や地方公共団体では「事業仕分け」「行政事業レビュー」の嵐が吹いていて、その事業に幾らコストがかかり、どのくらいのリターンがあったのか、いわゆる「コストパフォーマンス」が評価対象になりがちですし、文化予算が標的にされることも少なくありません。そういう状況では 1. の視点の評価だけでは対抗することが難しいと感じることが多く、 3. の視点の評価に軸足を置いているのです。それが、劇場を例にとってわかりやすい説明を求められれば、例えば劇場の存在が「地域の活性化に貢献している」「アウトリーチなどの活動で教育や福祉に寄与している」「劇場が地域のパブリシティ効果を引き出している」といった言葉になるでしょう。
こうして説明すれば、評価の考え方には様々な側面があることはわかっていただけると思いますが、果たして 1. から 3. までの視点を統合し、全体を評価できるような「設計」は可能なのかと考えると、私自身の経験では、まだそこに至っていないというのが正直なところです。
「トヨタ」では、アワード自体が当然 1. の視点での評価を行うことが目的と言えるでしょう。ですが、アワードのためにトヨタ自動車株式会社の社会貢献活動の予算を割いているわけですから、社内では 2. の視点での評価に当然さらされていると思います。また、社会的な認知が高いとは言えない「コンテンポラリーダンス」という表現の価値を発信する意味では 3. の視点も欠かせないことだろうと思います。