2015/06/17
2015年12月16日、原宿のVACANTを会場に「BONUS 第2回超連結クリエイション「牧神の午後」編」が行われました。中心となるのは3人の作家たち(捩子ぴじん、市原佐都子、高田冬彦)に渡した「ニジンスキー『牧神の午後』を解釈して映像のダンスを制作してください」とのテーマです。3人の作家たちはもちろんのこと、参加してくれた作家たちによってこのテーマが変奏されてゆきました。120名ほどの観客のみなさんに囲まれながら、トータルで3時間を超える長丁場のなかで展開された多数のプログラム。これは、それらのアーカイヴを兼ねる形で、当日の模様を再現するページです。(一部に性的な表現が含まれています。ご了解の上、ご覧ください。)
オープニング
前回と同様、Aokidのパフォーマンスからこのイベントは幕を開けた。
「牧神の午後」レクチャー・パフォーマンス
映像の鬼才・山内祥太による「牧神の午後」をめぐるレクチャー・パフォーマンスの動画化。
映像
トーク
2015年の「牧神の午後」
「ニジンスキー『牧神の午後』を解釈して映像のダンスを制作してください」とのテーマに、高田冬彦、捩子ぴじん、市原佐都子の3人の作家が応えた映像の上映+ミニトーク。
高田冬彦
映像
トーク
市原佐都子
映像
トーク
捩子ぴじん
映像
後日公開予定
トーク
「りみっくす・おぶ・ふぉーん」受賞者上映会
公募企画「りみっくす・おぶ・ふぉーん」(2015.11.30@BLOCKHOUSE)に応募してくれた作家たちの受賞作をライブで上演。
大柿鈴子、木村絵理子「牧神の午後」
橋本匠「superplay」
受賞者インタビュー
後記
以上のように、BONUSは2015年12月16日にニジンスキー「牧神の午後」をめぐるイベント(第2回超連結クリエイション)を行いました。
だからといって、ニジンスキーを、また「牧神の午後」を特権視するつもりは最初からありませんでした。大事なのは、ダンス史の遺産にしっかりと向き合い、対決することで、今日のダンス・クリエイションを活性化させることにありました。いまの流行とか、ここ10年、15年の動向とか、あるいは個人的な興味関心といった範囲を超えて、ダンス創作を100年単位で考える、そうした体力を自分たちが持ち合わせているのか確認する、そうしたことがしたかったのです。それに、今年は「牧神の午後」を取り上げて盛り上がって終了、というつもりでもありませんでした。今後一層活発に、「牧神の午後」に、ニジンスキーに、その他のダンスの遺産にぼくたちがちゃんと向き合うこと、そして地に足のついたそうした姿勢を獲得できること、このプロジェクトはこうした目論みのもと行われました。
だから、このイベントの一夜は、「「牧神の午後」を解釈して映像のダンスを制作してください」とのインストラクションに数名の作家が応えた「ヴァージョンその1」であり、決して決定版ではありません。むしろ「この作家がこんなアイディアを出したのなら、私はもっとこうしてみたい」というように、模範だったり、反面教師だったりに、作家たちの試みを受け取ってもらえたらと願っています。つまり、これを見たみなさんにも「「牧神の午後」を解釈して映像のダンスを制作してください」というインストラクションがすでに投げかけられているわけです。誰から? BONUSからというよりも、ニジンスキーから、あるいはダンスの神からと申し上げたい。
そう、今後もこのプロジェクトは続いていきます。みなさんも、「牧神の午後」を解釈してそのダンスを映像に収めてみてください。アップロードしたアドレスをこちらにお送りください。
一言、とはいえ、2016年のテーマを「牧神の午後」にしたのには理由があります。
「性愛と表現」をめぐる議論がここ数年活発になっていました。法や規制(自己規制)に話題は集中してしまいましたが、芸術表現が性愛というテーマとどう向き合うことができるのかという点については、純粋に芸術の問題としてもっと議論があっても良いと思っております。すくなくとも、「牧神の午後」が上演された100年ほど前には、賛否両論交じり合った議論が巻き起こったわけです。ぼくは単純にその状況を羨ましく思います。ニジンスキーがワンウェイ・ラブを「牧神の午後」で取り上げたことは、今日的な性の状況と通じ合う面があるのではないかとも考えました。ぼくたちは、スマホを手にし、自慰的な自家中毒状況を生きています。この状況を解毒する表現があってしかるべきだと思うのです。高田冬彦や市原佐都子の映像は、そうした課題に触れている。彼らの取り組みに、もっと批評(ひやかしやアイロニーの言説ではなく)は言葉を投げかけるべきではないでしょうか。
BONUSは「ダンスを作るためのプラットフォーム」であり「ダンスの土壌作り」のプロジェクトです。今回もコンペティションを設けてみましたが、今後はより一層、多くの方たちが参加できるプログラム作りを目指しています。みなさんもBONUSに参加してみてください。
2016.5.21
BONUS ディレクター
木村覚